口腔管理機能
口腔機能低下症とは

診断基準について
口腔機能低下症とは、口腔内のさまざまな機能が低下した状態のことです。
具体的なお口の機能としては「咀嚼する、飲み込む、唾液を十分に分泌する、はっきりと話す、舌や唇、頬を動かす」が主にあげられます。
ちなみに「口腔機能低下症」と診断されるのは、精密検査を行って
- 口腔内の衛生状態が悪い
- 唾液分泌量の低下
- 咬合力が低下
- 舌と口唇の運動機能が低下
- 舌圧の低下
- 咀嚼する機能の低下
- 嚥下する機能の低下
のうち3項目以上に該当した場合です。1項目だけ該当しても、口腔機能低下症とはなりません。
なお、口腔機能低下症はシニアの方に多く見られますが、それ以外の年代でも病気や障がいなど、さまざまな原因から口腔の機能が低下して起こることがあります。
こんな症状はありませんか
- 口の中が乾く
- 舌や唇を動かしにくくなった
- 会話や食事の後に舌が疲れやすい
- 噛み切る力が弱くなってきた
- 飲み込みにくいと感じる
- 飲み込むときにむせやすい
- 舌に白いコケのようなものが増えた
こうした症状がある場合は、口腔機能低下症の可能性があります。
口腔機能低下症は全身の健康に
大きくかかわります
口腔機能低下症を放置していると、しっかり噛んだり飲み込んだりすることが難しくなります。その結果、食事を十分に摂れなくなり、栄養不足になったりフレイルやサルコペニアが進むなど、全身の健康にも悪い影響が及ぶことになります。口腔機能低下症が進むと、介護が必要な状態になることもあるのです。
口腔機能の低下は、あらゆる年齢層で起こり得る問題です。食べ物を噛む力や飲み込む力、話すための発音など、日常生活の中で口腔機能は非常に重要な役割を果たしています。これらの機能をしっかりと維持することは、健康で自立した生活を送るために欠かせません。
口腔機能低下症が進む前に、早めに歯科医院に来て診断を受け、治療を行いましょう。適切なケアを受けることで、体の健康を守り、より充実した毎日を過ごすことができます。定期的なチェックやセルフケアを通じて、口腔の健康を守り、未来への健康を支えましょう。歯科医院への早めの来院が、その第一歩です。
当院での対応

いとう歯科では、口腔機能の低下が疑われる50歳以上の方に口腔機能低下症の診査・診断と治療を行っています。診療の流れは次の通りです。
アンケートへのご回答
「口腔機能についての質問用紙」に回答していただきます。
各種検査
同意をいただいた上で、次の検査を行います。
舌苔の付着状態
舌苔は、舌の表面に付着する白や黄色の物質で、食べ物の残りや細菌が原因で形成されます。舌苔の量は、口腔内の衛生状態や全身の健康状態を示す指標となり、過剰な舌苔は口臭や感染の原因になることがあります。
口腔粘膜湿潤度
口腔粘膜の湿潤度は、口の中がどれだけ潤っているかを示す重要な指標です。十分な湿潤状態は、飲み込みを助け、口腔内の健康を保つために不可欠です。唾液の分泌が不足すると、口腔粘膜が乾燥し、口臭や炎症の原因となる可能性があります。定期的に湿潤度をチェックすることで、口腔内の健康を維持し、快適な生活をサポートします。
残存歯数の確認
残存している歯の数も、噛む力や栄養摂取に影響を与える重要な要素です。これらを確認することで、口腔の健康状態を総合的に評価できます。
オーラルディアドコキネシス
オーラルディアドコキネシスとは、舌や口唇、軟口蓋の動きの速さや巧緻性(巧みさ)を発音を通じて評価する検査です。10秒間「パ」「タ」「カ」という音をできるだけ速く、繰り返し発音し、その回数やリズムを測定します。高齢者の口腔機能向上の指標として広く用いられていますが、当院では口腔周囲筋の機能検査としても活用しています。
音の意味は次の通りです
- パ:口唇の閉じ開きの能力
- タ:舌の前方部分を挙上する能力
- カ:舌の後方部分を挙上する能力
舌圧検査
舌圧検査は、舌が発揮する力を測定する検査で、飲み込みや発音に関連する重要な機能を評価します。舌圧が低いと、食べ物の飲み込みが難しくなり、誤嚥のリスクが高まることがあります。舌圧を適切に保つことは、食事の安全性や日常生活の質を向上させるために重要です。定期的な舌圧検査は、口腔機能を保ち、健康的な生活を支えるための一環です。
咀嚼能力検査
咀嚼能力検査は、食べ物をどれだけ噛めているかを評価する検査です。咀嚼機能が弱まると、食事を効果的に摂取できず、栄養状態に悪影響を及ぼすことがあります。また、噛む力や噛み切る力が低下することは、歯の損失やかみ合わせの問題を示す可能性があります。咀嚼機能を定期的に測定することで、口腔機能の維持と全身の健康をサポートできます。
嚥下機能検査
アンケート形式で、嚥下機能が低下していないかを評価します。
診断結果とトレーニング
診断結果をお伝えし、それぞれの状態に適した「お口の機能トレーニング」を説明いたします。行いやすいものから実施していきましょう。
口腔機能低下症は、放置すると全身の健康にも影響しますが、適切なトレーニングを続ければ徐々に改善していきます。
「最近飲み込みにくい」「むせやすい」「お口周りの筋力が心配」など、口腔機能が気になったらまずは一度当院までご相談ください。